「外から」
《立体作品/ラワン合板、赤松、水性塗料、ホースなど》

■コンセプト■

 本作は、人が音を出す際に生じる「音を出す存在と聞く存在が同空間に存在せざるを得ない」という現象を、楽器の構造を利用し変化させることで、空間的に切り分けた作品である。内部の演奏者は楽器の外側に包まれることによって、音が発せられる空間と区切られ、境界が生じる。演奏者にとっての楽器の外側は、構造によって内側へと変化し、外側にいるはずの鑑賞者は楽器の内側へと取り込まれてしまう。

「その錐体はゆれていた」
《立体作品/シナ合板、ワイヤーなど》

■コンセプト■

 動かすという行為は外界に対しての認知を深めようとする行為であると考える。それは箱の中身を知ろうとするために取る行動にその例を見ることができるだろう。しかし、動かすという行為は認知を深めようとしながらも、その結果としてカオスを生み出してしまうと考えられないだろうか。動かされた物体はさらに他の物体や気体を動かし、その伝播は連鎖的続き、時間軸を超えて他者に影響を及ぼす。やがてそれらの動きは認知を超え、予測不可能なものになる。その無秩序を肯定しながら、さらなる認知のための制作を行なった。

「フミナラス」
《立体作品/ステンレス、ランバーコア、釘》

■コンセプト■

 人間はその存在を有する際、同じく必然的に質量を有している。また、人間は移動を行う際には足音などによって音を発生させる。この『フミナラス』の上ではそんな誰しもが持ちうる人間の質量が移動することによって音を発生させる。鑑賞の際はぜひ『フミナラス』の上で移動しながら音を踏み鳴らしてみてください。

■駅から始まるアートイベント「キテミテ中之島2022」への想い■

 赤瀬川原平の「宇宙の罐詰」は思考の転換によって宇宙の内と外を軽やかに逆転させた。私の出品作もまた鑑賞者に思考の転換を要求する。大きな立方体状の内部から音が鳴らされる作品のタイトルは「外から」であり、それが指す外とはどこの空間か。また、鑑賞者は作品を見ながら何者/何の動力源によって音が作られているのかを想像する。直視を行えない内部/外部は鑑賞者によってリバーシブルに逆転され、演奏者は想像によって可変される。想像自体は現実ではないが、想像は現実を作り出すツールである。現実を改めて想像させることで、現実を再構築させようとすることがアートの役割の一つであり、今作における私の目的の一部であると考えている。

■Profile■

1998 青森県生まれ
2021 秋田公立美術大学美術学部美術学科/ビジュアルアーツ専攻卒業
現在 京都府在住、京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻在籍

【グループ展】

2019
「アーツアーツ 2019 展」(アトリオン 2F 美術展示ホール、秋田市)
2021
「SHOWREEL」(秋田公立美術大学サテライトセンター、秋田市)
「ものとかすひと」(千鳥文化/コーポ北加賀屋、大阪市)

なぜなら、ここにいるからである/2021